それは、私がまだ初心者だった頃のお話。
京都のとある場所に、ガラスショップがありました。
自分の工房で作っているそうで。
テレビで紹介されたって、レジのところに貼ってありました。
ただ、初心者だった私は、商品を見て、腰が抜けました。
そのうちの一つはフュージングで。
板ガラスを四角く切って、その上に既成のミルフィオリパーツが丸くならべられていて、そのミルフィオリパーツのわっかの上というか真ん中というかに、ビー玉が乗っかって、焼かれていました。
ということは、この板ガラスとミルフィオリパーツは、モレッティかそのコンパチで。
ビー玉って、膨張率いくらやのん?
という訳で、その周辺の同様の商品をくまなくチェックしましたが。
やはり、ビー玉と外のガラスの間には、亀裂が入っているものがたくさんありました。
「割れている・・・・・・」
心の中で、つぶやきました。
お店の中のお客さんは、「ね、かわいいでしょ」って、楽しげでした。
それから、数年後、同じ場所に行ってみると、ガラスショップだったときの姿のまま、そのお店はクローズして久しい様子になっていました。
やっぱり・・・・・・
話は変わって。
私は、クリスティン・フランツェン・オーの作品に、どっぷりはまっていた時期がありまして、その時に3つも買いました。
そう、有名なペイントの玉です。
そして、神戸で初めてフェスが開催されたとき、彼女が、デモンストレーターとしてやって来まして。
そのときには、ペイントの玉は、自分でも作り始めてはいたのですが、これはなんとしても見たいと思って、一生懸命見ていました。
ああ、ファン心理って、テクニックだけじゃないのよねえ・・・・・・
嬉しかったです。(TT)
その後、会場でだらだらとしていると、ボランティアスタッフをしていた日本人作家さん(英語が堪能)と、彼女が、なにやら英語でやり取り中のところを、目撃しました。
というのも、あのときのイベントは、アホほど贅沢にデモのプログラムが組まれていましてね。
どうやら、電気炉が足りないようなのです。
が、彼女のデモ玉が入ってから、まだ、時間が短すぎると彼女が言っているようなのです。
そりゃま、時間が足らんわな。
デモを見た私が、まだその前で、だらだらしているタイミングですもん。
何しろ、徐冷の問題は厄介です。
この電気炉の温度を、次の作品のために上げたいのだが、中には冷めかけの玉が入っている。
作業をしていなくとも、お待ちの時間が発生し、それを避けて通ることはできません。
昔聞いた話では。
アメリカでは、ガラスの徐冷点で、15分以上キープしてから温度を下げたものでないと、徐冷が終わったとは見なされないという慣例があるということでした。
ま、それも、大きさによるんですよ。
ブルザイのデータでは、オクタゴン16という電気炉で徐冷した場合、厚さ3.1ミリの物で、499℃で30分、12.7ミリのもので、460度で60分となっています。
↑インチ表示と華氏表示を訳したのか、中途半端な数字ですねえ
これって、とんぼ玉と比べると、かなり大きなお皿みたいな作品を作るためのデータなので、厚みがあると余熱もすごいことになって、それで、460度という低い温度で徐冷することになるんだろうなあと思うんですけど。
そのことを思うと、クリスティン・フランツェン・オーのペイントの玉は、小振りです。
それに、いくらペイントとは言え、凹凸もそんなに激しいわけじゃない。
それでも、割れたら嫌だからって、とても徐冷を重視していました。
その後、ボロでタコのスカルプチャーを作る、ジェニファー・エンフレスのデモを見に行ったときにも、タコは、一日がかりで1個作るということでした。
作業の途中に、何度も、電気炉で温度を均等にするお待ちが入りました。
そのお待ちの間に、小さな作品をいろいろ作って、見せてもらいました。
そうそう、モレッティでスカルプチャーを作る、ルチオ・ブバッコも。
とんぼ玉ミュージアムに置かれているデモ作品、あれを作るとき、違う色が繋がっている場所で、特定の色が割れやすいので、この部分が不安だと、しきりにおっしゃっているようでした。
あの作品は、本来、間間に、温度を均等にする時間が入るので、自分の工房で、安全に作る際には、一週間かけて作るべき作品を、温度を均等にする時間を省いて、作業だけを繋げて、何とか一日で作ったということで。
完成品を持ち帰る担当の人は、とても恐々でした。
そうそう。
モレッティのスカルプチャーの巨匠、ビットリオ・コンスタンティーニのワークショップでも、製作時は、大きなところから作って、つなぎの突起を作り、そこから小さな部分を作るという、サタケガラスと共通の作りをしつつ、製作途上と仕上げに電気炉を使われていました。
それに小さなものでも、徐冷を考えると、トータルの製作時間がかかるものがあるとおっしゃってましたっけ。
とまあ、そんなことを何度も見ると、いつも思うんです。
どこでOKとするのか?
いずれにしろ、サタケガラスは、引っ張りに強いのか、大きすぎないスタンダードに丸い玉なら、最後に炎を使った徐冷をして、性能の良い徐冷剤で冷やせば、まあ、まず割れません。
問題は、凹凸のあるものです。
例えば、玉にマグカップの取っ手のような、ループ状の物が、大きな塊の端っこに付いてる場合など。
徐冷が悪いと、割れる場所が、必ず決まっています。
ペイントの玉でも、描いた線が、玉に密着していない部分があると、危険です。
そんなこともあって、ペイントの玉、割とすぐにそれなりの形にはなったけど、商品にしても良いかなあと決心が付くまでに、4~5年は、かかったんじゃなかったかなあと思います。
いまだに、本体から浮いた状態で細い部分がある物は、商品化しません。
自信がないんですよね。
くま、カエル、こいのぼり。
教室では、そういう課題もやっていますが。
ループ状のフックって、やらないんですよね。
徐冷剤で、徐冷しても良いものって、自分の中ではまだ納得していないもんで。
というのは、サタケのスカルプチャーの場合、むしろ、徐冷剤の中での徐冷ってやらないようなので。
とんぼ玉と同じつもりで、えい!って、徐冷剤に突っ込むと、本体は熱い塊なので冷まされ過ぎはないと思うんですが、ループ部分は、空気中に置かれるより、徐冷剤に突っ込んだ方が、徐冷剤の温度に引きずられて急冷されそうだから。
だとしたら、空気中で冷ますなら、大きな塊の側の温度をある程度下げながら、全体を遠火で焼き戻しして、ループの冷めすぎを防ぎつつ、本体とループの側の温度差による、境目の歪を小さくして置いてやらないといけない。
そのとき、本体をカッパとかで挟んでいたら、本体に歪ができそうで。
結局、ループの場合は、電気炉で徐冷したい私がいるのでした。(^^;
やってみましょうかねえ。
時々、教室ではそんなことをボソッと言いつつ。
ループの作り方は知っているというか・・・・・・習ったというか、作ってはみたというか。
くるっと一周して、先端と根元を焼いて溶着する。
もちろん、溶着不足にならないように、つるりんと滑らかになるように作ります。
と、そこまでは良いとして・・・・・・
この後どうしたら良いのん?(^^;
↑誰に向かって聞いているのだ?
弟が作っている、カメとジンベエ、電気炉で徐冷もしているし、めちゃ細い浮き上がりもないし、そもそも、玉本体がステン棒に刺さっているので、カッパで挟んでいるわけでもなく、これならOKって線です。
そういえば、私も、以前は、ちびタコとかちびイカは、貼り付けたことがありましたが。
あれから、貼り付け系すら、あんまり作ってないですねえ。
スカルプチャー。
丸いものからの脱却は、いつかできる日が来るんでしょうかねえ、私。
↑やるとしても、玉の延長上にちょっと立体くらいで、ガッツリ立体はやらないと思うけど
と、スカルプチャーの作品集を見ながら、考えていましたとさ。(^^;