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とんぼ玉作家ガラスのさかなの「タワゴト日記」

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熱の履歴・・・・・・その②

 その①からの続きです。

 という訳で、簡単に、ガラスの構造の話と、ガラス内部のひずみの話を、しておかないといけないんだろうなあってことで。

 ガラスの構造の話。

 理科で習ったと思うのですが。
 水などは、気体、液体、固体の状態を変化するって。
 地上の気圧では、100度以上で、水蒸気、0度~100度の間は、水、0度以下は、氷です。
 じゃ、ガラスは?
 固まった時は、固体?
 いえ、内部の状態としては、動かなくなった液体なんですって。

 非晶質(=アモルファス)といって、主成分のケイ素(結合手が4本ある原子)が、規則的な結晶を作らずに、4本の手を、ランダムにつなぎ合った状態、なんだそうです。
 ちなみに、鉛ガラスは、この骨格の役目を果たす物質が、ケイ素だけではなくて、鉛も、間に入るそうで、鉛は結合手3本の原子です。
 なんらか、この鉛の性質が反映されているのか、鉛ガラスは、いったん溶けたら、固まるまでがゆっくりなど、ソーダガラスとは違った性質になるのです。

 さて。
 このガラスの棒の先に溶けたガラスでまるを作り、左手に持ち替え、もう一方で、ガラスの先端を溶かして柔らかくしたものを作り、この2つをくっつけたとき、何が起こっているでしょう?
 めっちゃ冷めていて、硬い状態の二つをくっつけても、くっつきません。
 温度がある程度高いと、くっつきます。
 この時、右側の塊と左側の塊の、それぞれの中にあるケイ素が、隣り合って、入り混じって、新たに手をつなぐ(結合する)と考えられます。
 固体の内部の原子は、高温になればなるほど、エネルギーが大きくなるので、運動が激しくなると、聞いたことがあります。
 ガラスの中でも、高温になって、激しく運動し、結合があちこちで、切れたりつながったり、場合によってはつながったままくるくると位置を変えたり、している状態が、ガラスが柔らかい状態と考えられます。
 温度が下がってくると、ある時の結合状態のまま、動きが小さくなって、最後には、場所も結合も、全く動かなくなってしまう。
 これが、完全に固まった状態。

 ということは、くっつくぎりぎりのかなり固くて、少しだけ柔らかく、辛うじてつく状態でくっつけた場合。
 あんまり、結合手同士が、手をつなぎあえてないと、考えられます。
 溶着をちゃんとやろうというのは、高温でくっつけることで、元は、左右別々のガラスだったものが、原子レベルで入り混じって、あちこちで、十分手をつなぎ合い、後から付けた接続部分の状態が、もともと一つだった部分と変わらないくらいにしておこうということです。

 ガラスの構造の話は、ざっと、こんな感じで。
 ま、良いか?
 と、上記の内容は、本で読んだり、習った話をつなぎ合わせて、自分なりの想像を交えて、ガラスの状態をシミュレーションするために、自分なりに描いた、ガラスのイメージです。
 なので、想像を交えた部分は、多分に正確でない可能性がありますので、ご了承ください。



 で、次は。
 膨張率と、内部の歪の話。

 さて。
 そんなガラスも、温度によって体積が変化します。
 柔らかいときは、割れる心配はないので、ここでは、固い時のお話です。
 固まって動かなくなったと思っても、内部では、まだ、ガラスの原子レベルでは、動けているときがあります。
 さらに冷めると、全く内部的にも動かなくなる。
 膨張率とは、ガラスが固い状態での、温度が一度上がった時の体積の変化の率です。
 測定して得られるんだったかなあ。
 0℃~300℃の間の、体積の変化率なんだそうです。


 膨張率104のガラスは、ある温度で、体積が1だったとすると、1度温度が上がった時、104×10のマイナス7乗(0.0000104)だけ、体積が増えるのです。
 ということは、1→1.0000104になる。
 100度温度が上がると・・・・・・
 あれ?
 (1.0000104)の100乗?
 1+0.0000104×100?
 どっち?
 (1.0000104)の100乗は、1.001040536・・・・
 1+0.0000104×100は、1.00104000・・・・・
 ま、誤差の範囲ってことで。
 100度、温度が上がった時、0.104パーセントほど、体積が増えるってことですね。
 100度、温度が下がれば、0.104パーセントほど、体積が減るということでもある。

 ということは、0℃から300度までだと、0.312パーセント、体積が増えるってことか。
 あれ?
 計算合ってますか?
 ま、イメージってことで。


 と、この体積の変化を踏まえて。

 離型剤を付けたステン棒に、一色のガラスで、地玉を巻きました。
 地玉は、最初、柔らかく、やがて、冷めて固まります。
 この一色の玉、うっかりと、一か所だけが、熱い状態で、他はやや冷め気味の状態で、作業を終え、そのまま冷めたとしします。
 やや冷めたところは、場所も結合の状態も、ほぼ決まって、動かなくなろうとしています。
 が、熱いところは、まだ、わずかに動けてます。
 冷めたところは、もうすっかり動かなくなって、体積が減り始めました。
 しばらくして、熱かった方も、動かなくなりました。
 で、全体が、もっと冷めて、体積が減っていきますが。
 先に冷め始めたほうが、すっかり内部的に固まって、体積の収縮が終わった時、遅れて冷め始めたほうは、すっかり固まるまで、まだ縮みます。
 その後、遅れて冷め始めたほうも、すっかり固まりますが。
 2つの温度が違う部分の境目で、後から冷め始めたほうが、より縮んだのです。
 より縮んだ方は、そうでないほうを、縮む方向に引っ張り、そうでない方は、より縮んだ方を伸ばす方向に、引っ張ることになります。
 こうして、内側には、ずっと、引っ張りあう力が生まれ、そのまま残ってしまいます。

 こうした、内側にできた力を、ストレス(=応力)と言います。
 ちなみに、単位は、N/㎡(ニュートンパー平方メートル)と言います。
 どっち向きに力がかかっているのか、向きまで含めた、物理的な量です。
 ↑なんとなく、物理らしさを出すために書いてみましたが、実際に測るわけじゃないので、あくまで何となくイメージだけ伝われば……

 さて。
 ここで。
 さっきの地玉を、もう一回巻いてみましょう。
 今度は、熱が均等になるように、きれいに巻けました。
 徐冷材の中で冷ましましょう。
 すっかり、均等に冷めて、内部の体積の違いによる引っ張る力(ストレス)は生じてません!
 いえ、実は、生じているんです。
 厳密には、どんなに頑張っても、外側が先に冷め始め、内側が、遅れて冷めるからです。
 外側がすっかり冷めて固まった後も、内側は、まだ暖かく、さらにもうちょっと縮んでから固まります。
 玉の外側は、内側のガラスから、うちに向かって引っ張られます。
 内側のガラスも、外側のガラスによって引っ張られます。
 内側に封じ込められたガラスは、外側のガラスとつながっていることで、体積はあんまり変わっていないようなのですが、本当は、もうちょっと縮みたいのです。
 そんな玉から、ステンレス棒を抜いたとき。
 ステンレス棒で、玉の内側に、傷をつけてしまったりすると。
 玉は、ぱっくりと、縦方向に割れてしまいます。

 そんな訳で。
 玉が巻き終わった時、表面だけある程度固まっても、まだ中が熱そうだなあと思ったら、火の外で、もうちょっと冷まし、でも、表面が冷めすぎてはいけないので、遠火であぶります。
 外側から程よく温められ、中の方には、あんまり熱が伝わらない程度に。
 中がまだ熱そうだと、火の外でさらにもうちょっと冷まし、また遠火であぶり。
 で、いよいよ、最近の性能の良くなった徐冷材に入れます。
 こうすることで、外側と内側の温度の差を小さくして、内側の引っ張り合う力を弱くすることができます。
 それでも、完全には、力がかかった状態をなしにすることはできません。
 でも、余分な力がかからなくすることで、穴の方からの刺激で、簡単に割れることはなくなるし、幾分働いている引っ張り合う力があることで、玉の表面の傷には、強い状態で、出来上がります。
 こういうのを、英語では、ファイヤーアニーリング(炎で行う徐冷)というそうです。


 と、内部のひずみの話は、こんなもんで。


 徐冷の話が、まだですが……


 その③に続く。
by glass-fish | 2013-07-06 00:13 | ガラスのウンチク