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とんぼ玉作家ガラスのさかなの「タワゴト日記」

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熱の履歴・・・・・・その③

 その②からの続きです。


 さて、徐冷の話です。

 フュージングをするときに、電気炉のプログラミング機能を使って、焼くことがあります。
 プログラムはこんな感じ。
 ①500℃まで、1時間当たり、250℃上がるペースで、温度を上げ、500度になった時、キープ0分。
 ②500℃から、800度まで、フルスピードで温度を上げ、800℃で、2分キープ。
 ③490℃まで、フルスピードで冷まし、490℃で、2時間キープ。
 ④300度まで、1時間に、100度のペースで、300度まで下げて、キープは0分。
 電源オフ
 実際に使っているプログラムではないので、これも何となくイメージですが。

 ①では、ガラスがちょっと柔らかくなるところまでを、ゆっくり温度を上げています。
 たとえば、一回焼いて、冷めたパーツで、中に歪を持っているかもしれないようなガラスが入っている場合、急に温度を上げると、それが、内部で割れて、激しく飛び散り、ひどいときは、電気炉の炉材に刺さったりします。
 割れたまま800度まで上げると、炉材に着いたガラスが溶けて、電気炉まで炒めてしまうことになりかねません。
 ただ、市販のブルザイの板ガラスの新品などを使う場合、ここも、フルスピードで、温度を上げたりします。

 ②ガラスが柔らかくなったら、急に温度が上がっても、危険ではないので、目的の温度まで、フルスピードで上げます。
 ここで、ガラスが溶け合って、目的の形が出来上がります。
 が、フルスピードだと、温度計の温度よりも、実際のガラスの温度の方が低い場合があったりするので、ちょっと、キープしています。
 場合によっては、800℃2分キープだったり、820℃キープ0分だったり、良さげな温度になりそうな組み合わせを、過去のデータを参考に、決めます。

 ③目的の形まで溶け合ったら、さっさと温度を下げるほうが、形がこれ以上崩れる心配がないので、さっさと下げます。
 が、フルスピードと言っても、中のガラスが小さいときは、結構速く冷めるし、中のガラス作品が大きいと、あんまり早くは冷めてくれません。
 中身の熱の持ちによって、フルスピードが変わります。
 さて。
 490℃まで下がったら、そのまま2時間キープする。
 ここが、すごく大事な、徐冷になります。
 「アニール・ソーク」と言います。
 ここで、作品の温度が、ほぼ、均等になります。
 理想的には、ほぼ均等な温度になってから、15分間、「徐冷点」と言われる温度をキープすると、ガラスから完全に歪が取れるはずですが。
 どのくらいキープすれば、温度が均等になるんだろう?本当に、実際のガラスの温度が、徐冷点といわれる温度になっているんだろうか?
 そこから、さらに15分か・・・・・・
 なんとなく、長時間キープしていれば、均等になりそうな気がする。
 そういえば、本に、ガラスの厚みとキープの時間と温度の目安が書いてあったなあ。
 とか、実際には、手探りで、温度と時間を決めることになります。

 ④キープは終わりましたが。
 ガラスの形は、固まりましたが。
 実は、ガラスの内部は、原子レベルで、まだ動いているのです。
 ここで、急冷すると、また、冷めやすいところが早く冷めて、内側が冷め遅れて、また、歪がひどくなる可能性があります。
 なので、内部の原子レベルでも、固定されてしまう温度を下回るまでは、そこそこ、ゆっくり冷まします。
 どのくらい?
 作品が大きければ、1時間に100℃って、早いかもしれません。
 小さい作品だと、まあ、大丈夫でしょう。
 それも、何となくだけど……今までそれで大丈夫だったから。
 そんな、データに基づいた、スピードで、冷ますのです。
 この工程を、「アニール・クール」と言います。

 そして、電源オフ。
 300℃以下のところは、あんまり早く冷ますと、歪とは関係なしに、割れてしまう恐れはありますので、急ぎすぎは禁物ですが。
 この温度の時には、内部の歪が新たにできてしまうという訳ではないので、そんなにゆっくりでなくても良いのです。

 でも、作品のサイズによっては、念のため、ゆっくり冷ますように⑤として、プログラムすることもあります。

 というのが、大体のフュージングの際のプログラムのイメージです。
 温度は、ブルザイというメーカーのガラスをイメージしています。

 とんぼ玉などを作る場合にも、適用できる考え方です。

 さて、ここで、ちょっと補足。
 ガラスには、「歪点」と、「徐冷点」という温度があります。
 ガラスによって違いますが。
 歪点とは、その温度以下のところで、新たに歪ができたり、既にできた歪が取れたりはしない温度です。
 多分、ガラスが、内部の原子レベルで、「こっちきついから、ちょっとそっちに詰めてもらえない?」みたいな、原子の移動が、全くできなくなった状態なのだと思います。(←想像です)
 それよりも、100℃くらい高い温度で、徐冷点という温度があります。
 ガラスの全体の形は、固まって動かない。
 ただ、内部的には、密度が高いところから、低いところへと、動きやすい方に、ちょっと動いて、密度のムラをなくすくらいの動きができる温度のようです。
 そういう、全体の形としては固まっているけれど、内部的には、ちょっとくらいなら動くみたいな温度域があるのです。
 その温度域の中で、全体が、均等にある温度になった時、そのまま、同じ温度でキープすれば、15分で歪が取れるという温度を、測定でなのか理論でなのか、探してあります。それが、徐冷点なのだそうです。

 だから、温度計が徐冷点の温度になった時、ガラスは、徐冷点の温度に近づいています。
 が、実際には、ガラスの温度の方が、高かったりします。
 しかも、端っこや表面近くは、ある程度徐冷点近くまで、冷めてきていますが、真ん中付近の芯の部分は、まだまだ、徐冷点よりも、実際の温度が高い。
 温度計と、ガラスの温度は、もちろん、イコールではありません。
 なので、長時間のキープが必要になります。
 温度が均等になって、そこから、15分キープすれば、理論上、15分後だけは、完全に歪がなくなる。
 そこから、またゆっくり冷めるので、再び、わずかなひずみが生じるはずです。
 そんな温度が、徐冷点です。
 アニール・ソークの温度は、必ずしも、徐冷点とイコールではありません。
 大きなものを冷ますとき、徐冷点でキープすると、実際には、なかなか徐冷点まで冷めないはずなので、やや低めの温度で、長時間キープするように書かれた本がありました、どこかに。



 という訳で……

 その④に、続く。
by glass-fish | 2013-07-06 00:25 | ガラスのウンチク